退職エントリ
昨年末がIndeedでの最終出社日だった。3月中旬までは有給消化でお休み、その後は国内IT企業に入社する予定。リクルート籍の時代を含めるとIndeedには新卒から8年半以上勤めたことになる。せっかくなので退職エントリを書いておくべきだろう。 退職の経緯 転職を考えた理由はいろいろあるのだが、根本的には違う環境で新しいことをやってみたかったということだと思う。昔は競艇AIを作って労働を辞めると意気込んでいた人が転職したあと楽しそうに働いているのを見ると、仕事の内容が人生に与える影響を感じさせられたし、「天職を見つける」とまではいかなくとも、少し興味がありそうな新しい環境を試してみたくなった。 私生活では子供が一昨年に生まれて、子育てでは新しい刺激を受け続ける日々なのだが、一方で自分のプライベートな時間というのはだいぶ減ってしまったので、仕事で新しいことを楽しめればいいなという気持ちもあった。今の仕事内容もエンジニアリング的に面白い部分もあると思うのだが、やはり1つの会社やチームで使う技術の幅には限りがあるし、長い間同じ環境だとどうしても刺激を感じづらくなってしまったところはあった。 また、メインの理由ではないが、英語ではない環境を試してみたかったというのもある。最初の数年は英語が上達している実感もあったのだが、最近は英語でストレスも感じない代わりに上達もしておらず、それでいて英語を喋っているときは100%の自分を出せていないような感覚がつきまとっていた。給与が良ければ英語でも問題ないと思っていたが、やはり日本語は楽ではある。 会社自体に大きな不満はないというか、むしろ環境が良すぎて長い間転職を真剣に考える気にもならないぐらいだった。給与・福利厚生もよく、同僚にも恵まれ、出社回帰の流れの中いまだにフルリモートで働けている。会社が大きくなるにつれて組織再編がよく起こるようになったりレイオフがあったりと社内がざわざわしてるなと思うことは増えたが、大企業では本当によく聞く話なのである程度はしかたがない部分なのだろうと思う。本当に新卒で入社してよかったと思える会社だし、短期的な資産形成だけを考えればどう考えても働き続けるべきだと思うが、このままだといつまでも転職せずキャリアの墓場で眠ることになりそうなので、たまたま友人が声をかけてくれたタイミングで転職活動をすることにした。なんにせよ一度転職活動をしてみれば今後転職が選択肢に入りやすいだろう。 転職活動 日本の企業をリファラルで2つ受けた。もう1社ぐらい受けようかなとも思ったのだが、仕事をしながら2つの会社の選考を進めるのは意外に大変だったのでこれ以上受けていたら手に負えなかったかもしれない。 必要書類を準備していて、実際に転職するかは別として職務経歴書は書いてみる価値があるなと思った。自分がどういうスキルを持っているのかを社外の方に伝えるのは難しいし、そもそも自分がどういうポジションに居るのか自分でもよくわかっておらず、それを整理するいい機会になった。就活でやる自己分析っぽいなと思ったが転職も採用なんだからそれはそう。最初の方は「フロントエンドに情報を渡すパイプライン作ってるからWebエンジニアやろw」と本気で思っていたのだが、いろいろ話を聞いたあとむしろインフラ寄りやSREの方が経験を活かせそうだと思った。 最初に声をかけてくれた友人の会社の面接では、あまり予想していなかったことを聞かれてしどろもどろになり、技術質問も微妙であっさりと落ちてしまった。多少準備不足の自覚もあり、リファラル選考で落ちるのはかなり推薦者に申し訳ない。 もう一つの会社の選考はとんとん拍子で進み、最初に面談してから1月弱で内定をいただいた。もうこの時点ではもう転職する決心をしていたのでそのまま上司に退職を伝え、入社が決まった。転職先はなんとなく入社後に発表しようと思っている(聞かれたら答えます)。 現職の有給がだいぶ余っていてすべて消化すると3月になってしまうので入社時期を迷っていたのだが、こんなに長い休みを取れることもなかなかないということでフルに休みを取ってから入社することにした。今のところ、キャッチアップしたい技術を学んだり泳いだり子どもと遊んだりして休みを有意義に使えている気がするので正解だった。転職後は心機一転、仕事がより楽しくなるような働き方ができればいいなと思う。 Indeedで何をやっていたかもまとめたが、特に本筋に関係ないわりに長くなってしまったので下に置いておく。 Indeedで何をやっていたか 8年半も勤めると、転職活動のときに自分が何をやっていたかを言語化するのにだいぶ時間がかかったので、この機会に自分がどんな仕事をしていたかも簡単にまとめておく。研修を除くと、最初の3年間は主にCS/セールス向けの社内Webツールを作っていて、2019年中旬以降は求人データパイプラインの運用・開発をしていた。この2つのチームでの仕事はいろんな面で結構違っていて両方のチームを経験できてよかったなと思っているが、個人的には後者のチームの方が性に合ってたなと思う。 Indeedでは特定の基準を満たした広告主企業に特典を付与していて、1つ目のチームでは主にその特典の資格計算システムを運用していたのだが、この特典資格の計算がなかなか煩雑だった。そのせいで「なぜこの企業様は条件を満たしていないのか」というような問い合わせがよく社内から寄せられていたので、なるべくそのような問題をセルフサービスで解決できるような社内Webツールも開発していた。 このチームの仕事は社内ユーザーの問題を解決して業務を効率化するというような分類になると思うが、フロントエンドを含め一通りの技術に触れたことと、ユーザーからのフィードバックが届きやすい点がよかった。ただ少人数で小さなシステムを運用していたので技術的なおもしろさという点ではやや物足りず、他のプロダクトチームとの関わりも少なかったので、シニアエンジニアがいなくなった後は技術的なフィードバックをくれる人もいないような状態になってしまった。率直に言えば学びが少なくなってしまったので、プロダクトを他チームに引き継いだのを機に全く別のチームに移れるようにしてもらった。 2つめのチームでは求人データパイプラインの運用・開発をしていた。簡単に説明すると、クローラー等が集めた求人データを加工・保存して、検索ページ等のプロダクトに提供するシステムなのだが、10年も動かし続けているとデータ量が増加したり、性能要件が変わったり、採用している技術が時代遅れになったり、依存先のマイクロサービスが廃止になったりする。それを動かし続けるためにシステムの内部(例えばデータベース)を適切に移行するというプロジェクトが多く、このチームで働いていた期間の大半はチームの誰かが何かしらの移行をしていたんじゃないかと思う。重要なサービスの内部をスムーズに移行するためには周到な切り替え・切り戻しの計画やテスト計画が必要で、「システムが1日止まると少々苦情が入る」ぐらいのチームから移動してきた身としてはだいぶカルチャーショックを受けた。 また、システムの問題の調査やReliability/Visibility等に関する改善も仕事の結構な割合を占めており、常に動くことが求められているサービスは信頼性に相応の投資をしているなと感じた。あとは他チームのプロジェクトのために自チームのプロダクトの使い方を提案したり、必要であれば新機能をデザイン・実装したりといった仕事があり、バックエンドチームはクライアントとなるチームを通じてエンドユーザーにインパクトを届けることになるのでこれも重要だ。そこそこの量のデータを捌くそれなりに複雑なシステムをデザインしたり改善したりするというのはエンジニアリングとして面白かったし、長くシステムを運用していると自分のデザイン判断のツケを払う場面にも出くわすので面白い(面白くない)。チームの性質上他のチームを巻き込むプロジェクトも多く、仕事の進め方の点でもいろいろ経験できたと思う。